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ぴあのピアの徒然日記

福岡でピアノを楽しむサークル、ぴあのピアの日記です。コメントは機能していませんので、メールを頂けると助かります。

シュベスターのグランド 

シュベスターネタで、もうひとつくだらぬことを。

今どきのネット社会では、どなたもそうだろうと思いますが、自分の興味の対象については、必要もないものまでついあれこれ貪欲に見てしまうもの。
ネットというのはそういう意味では、人のガツガツした部分をイヤでも煽ってくるようです。

くだらない、もっと時間を有意義に使うべき、と頭では思うものの、どうしても興味本位に手先が動いてしまい、ばかばかしい検索をしては、自分にとって欲しい情報から連続して関係ないものまで覗き見るというほうが正しいかもしれません。
そんなことをやっている中で、ネット上ではかなり有名なピアノ店に、シュベスターのグランドがありました。

シュベスターのグランドというのは、それ自体がレア物で、サイズもG60という奥行き183cmの一種類のみですが、多くの個体はもうボロボロで、大掛かりな再生作業を必要とするものが大半のようです。
その中に、珍しくかなり状態のいい一台がありました。
見つけたのは昨年秋ごろだったと思います。

このピアノ店のご主人がかなりのトーク名人で、いかにもフレンドリーにわかりやすくハキハキと説明をされ、ピアノもそれなりに弾けていつも簡単なものを肉厚なタッチで弾かれるので、どんな音のするピアノなのかもかなり分かるようになっています。
果たしてそのシュベスターのグランドは、状態もまあまあだし、なによりその音は軽やかなフランスピアノのようで、聴くなり気に入ってしまいました。

その動画は販売を目的としたもので、状態のいいシュベスターのグランドというのはめったにないこともあり、これはすぐに売れるだろうと思っていました。

ところが、予想に反してなかなかそうはならなかったようでした。
おそらく、これからピアノを買うという人の大半は、やはり大手の新品、もしくはそれに近いものに需要が集中するのか、このめったにない魅力的なピアノであってもなかなか買い手が現れず、ずいぶん長いこと動画もアップされたままでした。

大手メーカーのこのサイズなら、遥かに材質も劣り、音もデリカシーのない大雑把なものであっても、世間一般の定評を得ているから人気もあり、需要も多いことを思うと、ピアノは正当な評価を得るのが殊のほか難しい商品だと思わずにはいられません。

置く場所があれば、さっそく見に行って連れて帰りたいくらいですが、さすがにそれはムリ。
いつしか、この動画はマロニエ君にとって「時折見てはその音を聴いて楽しむもの」となり、一週間に一度は見ていたような気がします。

今年になってもその状態は続いていましたが、2月に入ってしばらくした頃だったでしょうか、いつもの様にその店のホームページから商品一覧を見ると、…あれ?
ついにそのシュベスターの動画がなくなっていました。
お店の商品なんだから売れたら、その動画も無くなって当たり前なんですが、なんとはなしにそこに行けば見られるのが普通みたいになっていたので、とつぜん消えてなくなるのは甚だ勝手ではあるものの、とてもショックでした。

不思議なのは、多くの点でアップライトのうちのシュベスターと共通した音の特徴がある点で、同じメーカーだというだけで、グランドとアップライトでは、形状もまるで違うのに、なぜこれほど相通じる音が出せるのかと思います。
たしかにスタインウェイはアップライトでもスタインウェイの音がするし、これって考えてみたらなぜそういうことができるんだろうと思います。

その後、くだんの動画は、未練がましく探してみたら、「嫁いだピアノリスト」というところにまだ存在しているのを見つけたので、とりあえず安心。
さっそくお気に入り登録しました。

2019/02/25 Mon. 01:58 | trackback: 0 | comment: -- | edit

花の命は… 

先に書いたシュベスターの調整。
今回のそれは殊のほか上手くいって、音を出すたびにハッとするような喜びを感じるピアノになりました。
手作りとはいえ、しょせん高級品でもないアップライトで、こういう状態が到来することは、そういつもあることではないでしょう。

全体に甘い音色、透明感、倍音、頼もしくキザな低音、さらにはシュベスター特有の憂いを含んだ明るさなど、弾けば曲が響きをまとい表情を作っていくあたり、さも価値のある楽器みたいな気配も加わって、再び階下のグランドには触れない日々が続きました。

このシュベスターは製造年代から言えば40年ぐらい経過したものではあるけれど、その音は大手の大量生産の音とは根底のところで違っており、贔屓目にいうならややヴィンテージ風なところがあり、それを楽しむことがこういうピアノの魅力だと思います。

メーカーに関係なく、ヴィンテージもしくはヴィンテージ風の音に慣れてしまうと、なかなか現代の新しいピアノ(高級品は別として、一般的な量産品の音)を受け入れることは、かなり難しくなるような気がします。
それは、ボディは鳴っていないのに、妙な感じにパワフルで、人工的な整ったような無機質な音がバンバン押し寄せてくるあの感じ。

もちろん価値感は人それぞれなので、一概には言えないけれども、音楽を愛好し、ピアノを喜びの対象として捉える向きには、楽器の発する音というのは、自分の感性に直に訴えてくるものかそうでないかは、その楽しさの質という点において、ずいぶん違ってしまうとマロニエ君は考えます。
どんなに精巧できれいでも、工業力が前面に出ているようなピアノは、どうしても心が癒やされることはなく、弾き手もつい技術に走り、ピアノの音を楽しみ、音楽を紡いで幸せになるという感覚を失っていく気がします。

とくにピアノは楽器を標榜しながら、実際には消費財とみなされて新しい物が幅を利かせ、それが標準という顔をしているし、教師や専門家にもそこに疑いを持つ人はさほど多くはありません。
また技術者も、多くの場合が販売ビジネスにも絡んでいる立場から、なかなか核心には迫らないし、あるいはそれに慣れすぎて、理想の音の基準が変質してしまっている気配がなくもない。

そのあたりは、技術者の方にとってはその技術を顕す対象としてピアノがあるから、日本製の精度の高いピアノ、すなわちクオリティの高い仕事がしやすいピアノはどうしても評価があがるし、ヴィンテージ系のピアノに関しては(一定の味があることは認めつつも)、職人としての本能みたいなものがあって、作りの甘さであるとか、音のムラ、新しいピアノにはないような欠点や衰えがどうしても目につくのだろうと思います。

これは、昔の巨匠たちがもし現代のコンクールに出たら、予選さえ通過できないだろうというのと、同じようなことかもしれません。


さて、シュベスターですが、先の調律で音を柔らかくして欲しいと依頼して、ほぼそのようにしてもらった経緯は前回書きましたが、そのときの仕上がりというのがあまりに完成度が高く、かつ繊細だったので、内心「あー、あとは崩れていくだけだろうな…」という一抹の憂慮がありました。
それから2週間ほどしたら、その精妙の限りを尽くした極上の音は雪景色が溶けていくようにしだいに薄れ、完全とは言わないまでも、かな以前に近い音(の硬さ)に戻ってしまいました。

ちなみにこの方はコンサートチューナーでもあり、一夜のコンサートのためのピアノなら素晴らしいものだったと思いますが、やはり家庭用ピアノの調整では、ある程度の耐久性への考慮という側面も欲しいと思ったりで、難しいところですね。

素人考えでは、単純にもっと針刺しをしてハンマーフェルトを柔らかくすればいいのにと思うけど、そう単純なものでもないのでしょうし、時間経過したハンマーはすでに柔軟性を失っていることもあるでしょう。
いずれにしろ毎月調整を頼むわけにもいかないので、もう少しだけ耐久性のある方法はないものかと思うばかりです。

ちなみにこの方から聞いた話では、有名なM商会の技術者には、なんとシュベスター出身の方がわりにおられるそうで、この思いがけない不思議な話にはきょとんとしてしまいました。

2019/02/20 Wed. 02:05 | trackback: 0 | comment: -- | edit

マイクロファイバークロス 

暮れに、手早くピアノを掃除するには、ダイソーなどにある使い捨てのフローリングワックスシートが意外にいいということを書きました。
まあ急ぐときには悪くはないけれど、でもやっぱり「床用」というのが気持的にひっかかるし、大事なピアノをあまりに安物で軽く済ませるのはいささか罪悪感がないでもなく、あまり常用するのは忍びない気になりました。

そんな折、たまたまピアノ専門の木工の職人さんとお会いする機会があったのですが、その方は作業後の拭き上げには、市販のマイクロファイバークロスをごく普通の感じで使っておられて「え?」と思いました。

マイクロファイバークロスは柔らかいものは傷になることがあるので注意が必要とされ、これは使ってはいけないものと思っていたので、これはまったく思いがけないことでした。
しかし、この方は塗装や補修/磨きなど、いわばその分野の専門家なのでその方のやり方というのは「プロの技」でもあり、それなりの経験があるはずで、実際その方の仕上げられたピアノは、本当にピカピカで見事なのです。

多くの調律師さんがネルのクロスなどを使われている中、この方は慣れた感じでマイクロファイバーを使われるのは驚きで、当然質問をしてみましたが、とくに問題はないとのこと。
注意すべきは、当たり前ですが必要以上に力を入れず、軽く均等にというぐらいで、「(使って)大丈夫ですよ」とサラリといわれたのは意外でした。
へー…そうなんだ…。

で、それから自分でもやってみました。
できるだけ手で触って柔らかいものを選び、水に濡らして固く絞り、ピアノ用のクリーナーを少量クロスになじませて軽く拭いてみると、苦もなくピアノはきれいになります。

水に濡らしたのは、マロニエ君の洗車経験などからしても、乾拭きというのあまり評価できないから。
人によっては乾拭きや毛バタキがダメージが少ないと思い込んでおられる方もありますが、マロニエ君はこれはまったく同意できません。
乾拭きこそ小キズの原因になり、そこになんらかのケミカルでも使おうものなら、伸びは悪くムラになるなど、いいことはなにもない。
それに対して、クロスが少量の水を含んでいることでケミカルを均等に広げ、きれいに仕上げる効果もあるようです。
水を含ませて力の限り固く絞り、そこにほんのすこしクリーナーを含ませる事がポイント。

先日も車のリペアショップの職人さんと話しましたが、やはりワックスやコーティング剤は、極力少量を薄く塗ることが大事と言われましたし、皮膚科の先生も塗り薬はできるだけ薄くと、どうやらこの点はどこも共通しているようです。
慣れないと、効果を期待して、つい多めに使ってしまうものですが、それが却ってダメなんですね。

そういえば思い出しましたが、行きつけの歯医者さんも、歯磨き粉(粉じゃないですが)は、ほんのちょっとをブラシの上にのせるだけでほとんどの人が使いすぎ、「私たちは一本のチューブを使うのに半年ぐらいですよ」と言われて驚いたこともありますから、とにかくどの世界も少ないほうがいいようです。

ただ、車でもピアノでも、大事なのは下地処理。
汚れや埃の積もった状態から、いきなり艶出しというわけにはいかないので、ピアノの場合はホコリ取りのモップ等で軽くホコリを落としてからこの作業をすることでしょうか。

マイクロファイバークロスでのピアノクリーニングは、簡単快適、仕上がりもキリッとした好ましい感じに仕上るので、今はこれが一番という感じです。
今さらこう言ってはなんですが、使い捨てのフローリングワックスシートは薄いので、あれはあれで使いにくさがありますが、クロスなら一定の厚みもあり、面を変えて使って、洗えば何回でも使えるので、今はこれが一番作業性もよく気に入っています。

2019/02/10 Sun. 03:05 | trackback: 0 | comment: -- | edit

少しソフトに 

昨年末から持ち越しになっていた、自室のシュベスターの調律をやっていただきました。
主治医の調律師さんは毎回丁寧にやってくださいますが、今回は主に整音をメインとしてお願いし、トータル5時間オーバーの作業となりました。

聞くところによると、一般的にはアップライトのハンマーヘッドは針を入れづらいほど固いものが多いらしいのですが、我が家のシュベスターは珍しいほど柔らかい巻きだそうです。
こういうところにも作り手の音に対する何らかの意図が表れているのでしょう。
柔らかいハンマーといえば、主にアメリカのピアノであるとか、ヨーロッパでも古い時代のピアノがそうでしたが、その後は固いハンマーを針でほぐしながらヴォイシングしていくのが世界的な流れになった印象があり、深くまろやかな音より、エッジのきいたインパクトのある音を時代が求めたのかもしれません。

なので現在は巻の固いハンマーが主流かつ固定化していると思っていたら、ここ最近の日本製の新しいピアノ(グランドを含む)は、どちらかというと以前より柔らかいハンマーが付いているんだそうで、これは意外でした。

もちろん、ただ柔らかいとはいっても、その素材や製法、ハンマーとしての性質はいろいろあるわけで、良質の羊毛で作られた昔の古き良きハンマーとは根本的に違うとしても、新しいピアノのハンマーが以前より柔らかくなってきたというのは、ちょっと意外な話でした。
いわれてみれば、たしかに最近のピアノの音は深味こそないけれど、さほどキンキンした音ではなくなり、ほどよく角のとれた嫌味のない音になっているので、それを可能にしているひとつが柔らかいハンマーなのかもしれません。

シュベスターに戻ると、かなり弾いて少し派手な音になっていたので、ソフトな音にして欲しいという希望を伝えましたが、この調律師さんはかなりのこだわりのある方で、すぐ単純に「はい」というわけにはいきません。
針は一度入れたらもとには戻らないこと、ただソフトにするだけでは音の輪郭がぼやける、フォルテシモが出なくなる、必要な芯までなくなってしまうことなどを考慮され、きわめて慎重に針を入れられました。

入れたら入れたで、隣り合う音のバランスやらなにやらがあり、その都度調整。
さらに外していた上前板/鍵盤蓋を取り付け、前屋根も閉めて音を出すと、我が家のシュベスターは「箱鳴り」がするのだそうで、そうなるとまた少し違ってくるというので、また外して追加作業となり、こんなことをやっていると時間はどんどん過ぎていきます。

このシュベスターはそこそこ良い音を出すピアノだとは思うものの、新しいピアノではないので問題もないではなく、例えば巻線(低音の弦)の中には、ややあやしいものがあったりで、それらは順次解決すべき課題。
問題のある弦は張替えもやむなしかと思いましたが、とりあえず硬化剤を使いながら調律で音を出すという方法が取られたところ、それほど気にならないまでに持ちなおし、もう少し現状で様子見することになりました。
これはあくまで一時しのぎであって、基本的な解決ではありませんが。

硬化剤といえば、中音〜次高音にかけても、ソフトにするためにも上記の音の芯を失わないためなのか、僅かに硬化剤を使いながら音そのものはソフト方向に持っていくという手法が取られ、音作りは単純ではないなあと勉強になりました。
結果は上々でしたが、かなり精妙に仕上がった感じもあるから、その精妙さが崩れるのが惜しくて、この数日はチビチビと美酒を舐めるように弾いてます。


今回、調律さんから、日本ピアノ調律師協会のカレンダーというのをいただきました。
見ると上下に分かれ、上が写真、下がカレンダーというよくある作りで、ひと月ごとの12パターンですが、その写真というのがいずれも博物館級のピアノで「わっ!」というものでした。
しかも大半が名も知らぬような珍品ばかりで写真も非常に美しく、さすがは技術者集団だけのことはあると唸りました。

まさか日本に、こんなにマニアックで素晴らしいピアノのカレンダーがあるなんてちっとも知らず、昔のものも見てみたいです。

2019/02/05 Tue. 02:06 | trackback: 0 | comment: -- | edit

意図不明 

コンクールネタでもうひとつ。

今年のNHKは、年初からピアノ関連の番組が多いということを書きましたが、更にそれは続きました。
「『蜜蜂と遠雷』 若きピアニストたちの18日」というもので、第10回浜松ピアノコンクールに密着したドキュメント。

ところどころ、俳優の中川大志さんがピアノの前で、小説『蜜蜂と遠雷』を手に朗読を挟みながら番組が進む構成。

『蜜蜂と遠雷』は、マロニエ君にとって読んだころから、小説として掴みづらく、なにが主題なのかよくわからない作品だったのですが、そんな印象とは裏腹に直木賞と本屋大賞をダブル受賞し、どんどん話題となっていったき、なんだか自分の感覚だけが世間から置いて行かれるようでした。
そもそも『蜜蜂と遠雷』というタイトルからして、もう忘れたけれど、なんだかもってまわった謎解きみたいなわかりにくいもので、要するにピアノということ以外、自分の趣味ではないものづくしでした。

べつに漱石だ谷崎だと旧いものにしがみつく気はないけれど、こういうものが今どきは文学作品として評価されるんだということに困惑したのが偽らざるところでした。

さて、その『蜜蜂と遠雷』を前面に押し出しながら、NHKによる実際のコンクールのドキュメントという作りのようですが、まず事前の率直なイメージとして「60分は短いのでは?」というのが頭をよぎりました。
調律師のショパンコンクール、ピリオド楽器のショパンコンクール、左手のコンクールなど、いずれもここ最近のNHKのそれらは2時間に近いサイズで、60分とわかったときからちょっとへぇ…という感じが。

夕食を外でとっていると、一足先に見られた知人の方からLINEが届き、「牛田智大さん個人のドキュメンタリーのようでした」というもので、???
もうこの時点で見る前から半分腰を折られた気分。
実際に見てみたら、まったくその通りで、彼がメインの番組構成でした。

驚くべきは、決勝進出の6人中、今回は日本人が4人と大健闘し、これはこのコンクール初という快挙であるにもかかわらず、番組は牛田さん以外の誰ひとりとして取り上げることがなかったばかりか、優勝したトルコのジャン・チャクムルさんの演奏さえ完全無視されていたこと。

番組タイトルが「…牛田智大の18日」ならまだしも、「…若きピアニストたちの18日」ですから、これはなかなか納得するのが難しいものでした。

牛田さん以外に唯一取り上げられたのは、3位入賞の韓国のイ・ヒョクさんで、決勝での演奏が少しとホテルの部屋で弟とチェスをやっているシーン、あとは途中で敗退したコンテスタントが、日本のホストファミリーの家族と過ごす様子などが少しあった程度。

べつに牛田さんにどうこう言うつもりはありません。
でも、同じ決勝まで勝ち進んだ日本人の今田篤さん、務川慧悟さん、安並貴史さん、そしてなにより優勝したジャン・チャクムルさんらは、この番組を見たらどう感じるのだろうと思うし、きっといい気持ちはしないでしょう。

ちなみにイ・ヒョクさんは決勝ではラフマニノフの3番を弾いていましたが、あの難曲を弾きつつその落ち着き払った演奏とテクニックは不気味なほどの凄みがありました。
なんと、ヴァイオリンも達者、将来は指揮者になりたいのだそうで、まさに次世代のチョン・ミョンフンとでもいいたくなる存在感がありました。
天才が当たり前の世界というのは、いやはや恐ろしいものです。

ピアノは、ヤマハ、カワイ、スタインウェイの3台。
ですが、浜松はヤマハ/カワイゆかりの街だからでしょうが、昔からこのコンクールではどうもスタインウェイは脇役という感じが否めず、それはそれでアリだと思います。
むしろ、浜松らしくピアノはヤマハ/カワイだけにしたほうがずっと潔い気もしますが、そうはいかないのだろうか。
できれば各社2台ずつ、計4台の中からピアノを選ぶようにしたほうがスッキリしないでしょうか?

驚いたのは、浜松駅の構内にはヤマハのCFXがポンと置かれていて、それで移動中の牛田さんがスーツケースを側においてリストのソナタを弾いていましたが、さすがは浜松、駅ピアノもすごい!と思えるシーンでした。

あとで調べると、優勝者が弾いたのはカワイのSK-EXだったようで、昨年カワイのサロンで同モデルを弾かせてもらって、そのときの感想を「点数が確実に稼げるコンクールグランド」というように書きましたが、まさにその面目を果たしたというか、ご同慶の至りといったところでしょう。


2019/02/01 Fri. 02:19 | trackback: 0 | comment: -- | edit

左手のコンクール 

1月6日にBS1で放送された「私は左手のピアニスト〜希望の輝き 世界初のコンクール〜」を見ました。
もたもたしているうちにすでに再放送までされていたようです。

日本でこの分野で有名なのは、フィンランド在住でリサイタル直後に脳梗塞で倒れられ、いらい右手に障害を負われて左手のピアニストに転向された舘野泉さんですが、真の意味で最も脂ののった実力者といえばおそらく智内威雄さんではないかと思います。

以前NHKでも智内さんを取り上げたドキュメントがあり、ドイツ在学中にジストニアを発症し、曲折の末に左手のピアニストになられた方ですが、その実力には舌を巻いた記憶があります。
この方は自身の演奏活動だけでなく、同じく右手に障害を持つピアニストを手助けすべくさまざまな活動もされていて、左手への編曲や、ネット上での演奏技術の公開など左手ピアノのためのマルチな活動をされています。

少なくともマロニエ君の中では、日本の左手のピアニストで真っ先に頭に浮かぶのはこの智内さんだったのですが、番組開始早々、このコンクールの会場が箕面市立メイプルホールという文字が出たとき、以前智内さんの活動拠点が箕面市という記憶があったので、これはもうこの方の存在と尽力により左手のコンクール開催に至ったということを確信しました。

コンクールはプロフェッショナル部門とアマチュア部門に別れ、3日間という短い期間で競われるもの。
プロフェッショナル部門は「左手」というだけで、まさにハイレベルの方ばかりで、多くの方がもともとは両手で弾かれていたにもかかわらず、病気や右手の故障で左へ転向された方がほとんど。

その演奏技術たるや大変なもので、もともと両手を使っても難しいピアノであるのに、それを左手だけで演奏してハンディなしの音楽として聴かせるのですから、これはもう尋常なものではありません。
実際にその演奏の様子は、左手だけがピアノの広い鍵盤上を飛び回り、そのスピードといったら目がついていかない早業であるし、伴奏やベースのハーモニーを鳴らしながら、旋律を繋いでいくというアクロバティックな動きの連続で、見ているこっちがくらくらしそうでした。

梯剛之さんや辻井伸行さんのように全盲であれだけの見事な演奏ををされる方がいるかと思えば、左手だけでこれだけの演奏を実際にされる方が何人もおられるわけで、その想像を絶する能力にはただただ驚嘆するのみ。

スクリャービンの前奏曲とノクターン、ブラームス編曲のバッハのシャコンヌ、ラヴェルの協奏曲などは、左手のための作品としてよく知る圧倒的な傑作ですが、それ以外となると、なかなか作品に恵まれない一面があり、ほとんど無限というほどの作品がある両手に比べると、左手の世界での大きな問題は作品にあるような気がします。

そういえば、以前の智内さんのドキュメントでも、ドイツ楽譜店で左手のための作品の探すシーンがあったし、多くの作曲家が左手のための作品を書いたけれど、ほとんどが忘れられ日の目を見ることなく埋もれてしまっているというようなことを言われていたことを思い出します。

もっと多くの作品が演奏され多くのCD等になって、耳にする機会が増えることを切に期待しています。
左手のピアノの魅力は、限られた音数の中に、いかに濃密な音楽が圧縮されているかにあるし、番組内でも誰かが言っていましたが、両手のものよりさらに熱く激情的でもあることが多いという点では大いに同感です。

はじめちょっと物足りないようなイメージがあるけれど、そこを超えると、左手ピアノには人間のぐつぐついうような情念とかエネルギーがそこここにうねっていて、深遠な世界があり、これはひとつのジャンルだと思います。
たしかに音が多ければいいというものでもなく、ソロよりも、連弾や2台ピアノが優位とは言い切れないのと繋がりがあるかもしれません。

また、ピアノの音も、両手より赤裸々にその良し悪しが出て、楽器の実力も問われる気がします。

楽器のことが出たついでにちょっとだけ触れておくと、ヤマハがコンクールの後援ということもあって、ピアノはヤマハのみでしたが、そこに聴くCFXの音はまったくマロニエ君の好みとは相容れないものでした。
もしかしたら、左手ということを意識した音作りがされた結果なのかどうか、そのあたりのことはまったくわからないけれど、できればもっとオーソドックスで深い音のするピアノで聴いてみたいと個人的には思いました。


オタク的なことを一言付け加えておくと、このコンクールのピアノで気付きましたが、ヤマハCFXは外観デザインで足の形が変更されています。
2015年の登場以来、シンプルかつ直線基調の足でしたが、最新のモデルはそこに穏やかなカーブがつけられているのを確認。
昔もヤマハのグランドの足にはわずかにカーブがついていたし、Sシリーズは逆にふくらはぎのようなぷくっとしたふくらみがあるなど、なぜか足に曲線を使うのがお好きみたいです。


2019/01/27 Sun. 03:11 | trackback: 0 | comment: -- | edit

楽しむもの 

ピアノクラブ(弾き合い)の新年会というのがあり、マロニエ君は会員ではないのですがお招きいただいたので、いいのかなぁと思いながら少しだけ参加させてもらいました。

個人宅でやられているもので、1時間ほど遅れて行ったのですが、近づくにつれピアノの音が漏れ聞こえて「やってるやってる」という感じで歩を進めます。
ドアを開けると、弾いているのはご無沙汰していた顔見知りの方。
短髪、口ヒゲ、逞しい格闘家のような体軀の壮年男性ですが、身をかがめながら可憐な音でドビュッシーのアラベスク第1番を、バスケットから花びらがこぼれ落ちるように弾いていました。

中に入ると横長のテーブルにずらりとご馳走が並び、すでにみなさん勢揃いされ、宴もたけなわといったところ。
その脇にピアノがあり、飲み食いしながらの入れ代わり立ち代わり各人各様の演奏が続いて、ピアノの音が途絶える隙がありません。

みなさん和気あいあい、ピアノを弾くのが楽しくて仕方がないご様子。
さらに、そのピアノの仲間がいることが輪をかけて嬉しくて仕方ないという感じでムンムンでした。
ピアノを弾くことがこれほど楽しいものだということを、むかしむかしのレッスンに通っていた子供の頃に感じることができたら、マロニエ君もどれだけよかっただろうと思いますが、残念なことに真逆の世界でした。

小学校時代から某学院に通っていましたが、そこはピアノの指導の厳しさで当時の九州では随一で、まわりは桐朋や芸大/芸高に進む人がずらりで、院長を頂点に先生方もこわいのなんの…ピアノと恐怖は同義語。
マロニエ君なんぞ、そこでは一二を争う劣等生で練習もせず屋根裏のネズミのように逃げまわっていたので、当然のごとくの有様ですが、今にして思えば、そのぶんピアノ好きの火を消さずに済んだのかもしれません。
小さい頃からのピアノ浸けの体験があだとなり、ものすごく上手いのに音大を卒業するや、すっぱりピアノと手を切ってしまう人もいたりで、それからみれば、下手でも好きでいられるぶんいいかな?とも思ったり。

話が逸れました。
ここのピアノは、このブログでも何度か書いたことのある戦前のハンブルク・スタインウェイのSで、マロニエ君はちょうどその脇に座っていましたが、しばしば床が震えるほどのあっぱれな鳴りにはあらためて感動です。

おまけに、真横でこれだけ鳴っているのに、音質が少しも耳障りでないのはさすがです。
以前、ある場所で、やむを得ずピアノのすぐ側に座ることになったのですが、日本製の定評あるグランドから出るのは脳ミソの奥にまで達するような突き刺さり音で、失神同然になったことがあります。
やはり良い材料で作られた楽器の音は、人間の生理とどこかで折り合いをつけることができるようになっている気がします。

人工乾燥、流れ作業、大量生産、仕上がり精度は超一流というピアノは、楽器じゃなくまさしく製品ですが、やっぱりピアノは楽器であって欲しいもの。

多くの人は、いかにスタインウェイとはいえS155は最小サイズなのだから、それなりの音しか望めないと思っておられる方も多いと思いますが、それはまったくの誤りであることが、こういうピアノの音を聞いたらわかります。

さすがにBあたりとは違うかもしれませんが、低音などもかなりボリュームのある深い音がするあたり、このピアノの音だけを聞いてS/M/O/Aを明確に聞き当てる自信はありません。

なので、いいものを探し当てたらヴィンテージのスタインウェイはやはり恐ろしい力を持ったピアノだと思います。
そのためのお値段とマークは伊達じゃない。
ネット相談では、「スタインウェイのSを買うのは愚かなブランド志向で、そんな予算があるならサイズに余裕のある国産のプレミアムシリーズのほうが良い。ピアノの真価の分かる人はむしろそちらを選ぶ。スタインウェイの価値を発揮するのはB以上」などと、さもわかったようなことを断定的に書いている人がいますが、こういうことを自信たっぷりに書く人の中には技術者を名乗る人も多いのは驚くばかりで、価値感はそれぞれ、どちらが良いなどとは軽々に言えるものではないでしょう。

…また話が逸れてしまいました。
とにかく、ピアノは力んで挑むものではなく、楽しむものということですね。


2019/01/23 Wed. 02:16 | trackback: 0 | comment: -- | edit

ピアノの運動不足 

この前の連休、ピアノ好きの方が4名ほど我が家にいらっしゃいました。
みなさん、非常に熱心でピアノを弾くことに格別の喜びをお持ちの方ばかりです。

自宅リビングに置いているグランドは、むかし一大決心をして購入したにもかかわらず、普段ほとんど弾かずに置いているだけという状態が続いています。

年末には1日かけて調律等をやっていただいているので、状態は悪くないはずなのですが、前日ちょっと試弾してみたところ、予想以上にピアノが眠ってしまっている状態でした。
明日はこのピアノを弾きに人が来るというのに、これじゃあいくらなんでもまずいと思い、かなり焦りながら暫く弾き続けました。

いまさらこんなことを書くのもどうかと思いますが、普段自室のシュベスターばかり弾いていると、知らず知らずのうちに指がそれに慣れてしまうらしく、それにも困りました。
ざっくりした言い方をすると、アップライトのタッチの軽い部分と重い部分、グランドのタッチの軽い部分と重い部分は、どうもほとんどが逆になっているようで、加えて慣れというのは恐ろしいもので、やけによそよそしく、弾きにくさのほうが目立ってしまいます。

普段あまり弾かないことが祟って、花に喩えると花びらがかたく閉じてしまっており、アクションにも響きにも渋さがまとわりついてしまい、弾きにくいことといったらありませんでした。
このときはもう時間的な余裕もなかったのですが、なんとかほぐそうという一念で全音域のスケールを繰り返したり、強めの曲をヒーヒー言ってとにかく無理して鳴らし続けたのですが、こうなるとピアノの楽しさはゼロ、テンションは下がり、指や腕はびりびりと疲れてくる始末。
それでも、1時間ほど経ったころ、ようやく少しピアノが鳴ってきたのがわかりました。
鳴ってくるというのは、全体がほぐれてくるのはもちろん、顕著に感じるのは旋律が歌うようになることでもあり、それがわかったときはようやく少しホッとしました。

この日はこれが精一杯。
当日は、5時間ほど滞在され、途中かなりおしゃべりを挟みながらも、交代しながらあれこれ弾いていただいたところ、終わりのほうの一時間ぐらいだったか、聴いていて明らかに鳴り方が変化しているのに気づく瞬間が訪れました。

やれやれと思ったところで、食事に出ることになり、帰宅したのは深夜でした。
それでもなんとなく気になって、翌日まで我慢できずに、そっとキーに触れてみると、アッ!と声を出したくなるほどタッチが軽めに変化していました。
ある程度弾くということはこういうことなのかと、それはわかっているはずだったのに、自分のピアノがわずか2日の間にここまで変化してしまう過程が観察できて、あらためてその必要性を思い知りました。

実は、暮れに調律師さんが来られた折に、タッチが重いと訴えたところ、あれこれやっていただき、ダウンウェイトを計測すると概ね48〜50gというところで、重めといえばいえなくもないけれど規定値になんとか収まっているという感じでした。

マロニエ君は以前、コイツにはこんなものが喜ぶだろうと思われたのか、ダウンウェイト計測用の錘を調律師さんからプレゼントしていただいて、いつもピアノのそばに置いています。
さっそく計測してみると、常用域の4オクターブは中央の4鍵を除いてすべて48gで鍵盤が降りるようになり、3鍵が49g、1鍵だけ50gというところまで数値も変化していました。
さらに、数値だけでなくスカッとした指についてくるタッチになっており、自分のピアノに対するかかわりの薄さが冴えないタッチの第一の原因だったことを悟りました。

これをもし調整だけで解決しようとすれば、再びホールの保守点検メニューのようなことになるのかと思うと、そのための調律師さんの労力、時間、費用などを考えたら「なんたることか!」と思いました。

そういう意味では、この4人の来訪者には心から感謝しなくてはなりません。
というわけで、その後は弾いているのかというと、うーん…。

2019/01/19 Sat. 02:28 | trackback: 0 | comment: -- | edit

氏より育ち 

1月3日に書いたブログの続編。
同じ街で、もう一軒のピアノ店にも行ってみました。

ここはスタインウェイ、ファツィオリのような高級品から、ペトロフ、ディアパソン、さらにはウエンドル&ラング、フォイリッヒといったかつてのヨーロッパブランドが現在中国生産されるリーズナブルなものまで、幅広い銘柄を取り扱うピアノ専門店。

ホームページによると、この店がいま最も力説していることが、プレップアップという出荷調整。
この作業を入念に行なうことで、ピアノの音や機構を精密な領域で整え、潜在力を最大限発揮させるという最も正統的な考え方で、それによっていかにピアノが明瞭確実にすばらしいものになるかを実践している店。

アクションという繊細で複雑なしくみを持つピアノにおいて、そのメカニズムの正しい調整がいかに大切かということは、いまさら言うまでもないことですが、なかなかそのように調整されたピアノが少ないのも現実。
たかが調整と思うなかれ、ピアノを生かすも殺すもこれにかかっているといっても過言ではありません。

その最大の難点は、非常に時間のかかる作業の積み上げによってはじめて到達できるもので、すべてが地道な手作業によるものであることと、なかなかその重要性を理解するだけの一般認識がないというところでしょうか。
何日がかりでそれをやったとしても、わかりやすく目に見えるものではなく、やらなくてもとりあえず普通に音は出るし演奏はできるから、それをやりたがらない店がほとんど。

お客さんもそういうことより、価格や値引きを求める人が多いということなどもあるのかもしれません。

アポ無し(購入目的ではないので、当たり前)で行きましたが、若いお店の方が、快く店内あちこちを案内してくださり、最も感銘を受けたのはグランドの展示場でした。
そこにはペトロフ、ウエンドル&ラングのほか2台のディアパソン183cm(新品)などがあり、一台は一本張り仕様でしたが、そのタッチと音の素晴らしさは、エッと声が出るほどすばらしく、思わず息を呑みました。

というか、マロニエ君はかつてこれほどリッチな音となめらかなタッチをもつディアパソンを弾いたことはなく、つい最近もディアパソンのアクションはもったりして時代遅れというようなことを書いたばかりだったこともあり、これにはかなりの衝撃を受けました。

まずなんといっても発音が素晴らしく、濁りもクセもない筋の良い音が、澱みなく軽やかに立ち上がってきます。
その音はディアパソンらしいというよりも、もっと普遍的なピアノの美音で、腰がすわっていて、太くて明晰、なんのストレスもなく朗々と、しかもさも当たり前のように鳴っていました。
タッチは重くも軽くもなく、どのキーもむらなく整い、スカッとしているのにしなやか。
強弱硬軟意のままで、いくらでも弾きたくなる気分にさせてくれるものでした。

その技術者の方とも少しお話ができましたが、大事なことは、鍵盤を抑えて打弦するまでの過程にさまざまな(あってはならない)ブレーキがかかっているから、それを地道な作業でひとつひとつ取り除いているということ。
至極もっともなお話でした。

この出荷調整は人の手でおこなうしかなく、ひじょうに時間をとり、しかもしないならしないでも商品としては成立するため、営業サイドからすれば非効率でコストのかかる作業みなされ、名のある一流ピアノでも、昔ほどプレップアップに時間を書けなくなったという話はよく耳にします。

メーカーや輸入元でさえそういう割り切った方向にかじを切っている中、地方のピアノ店で、ここまでこだわっている店があるということ自体、なんだかかとても感動させられる事実でした。
その甲斐あって、そこに置かれたピアノは値段の問題ではなく、真の意味での高いクオリティをもったピアノになっていました。

もし目隠しをされて、そのディアパソンと、その倍の値段もするような普通のプレミアムピアノを弾いたら、マロニエ君はきっとここのディアパソンを高級ピアノと感じて選ぶだろうと思います。
いわばアスリートが名監督との出会いによってメダルを取れるところまで到達できるようなもの。

本当にいいものに触れたときの感触というのは、いつまでも忘れられない深い記憶となりますが、あのディアパソンの音とタッチの素晴らしさはまさにそれでした。
ピアノにとって精魂込めた調整がいかに大事かは重々わかっているつもりでしたが、あらためてそのことを再認識させられる貴重な体験でした。

2019/01/14 Mon. 02:41 | trackback: 0 | comment: -- | edit

NHKピアノまみれ 

1月5日の朝、何気なく新聞のTV番組表を見ているとピアノという文字がフッと目にとまりました。
するとどうでしょう、NHK-BS1の1月5日は、朝の9時から16:30までピアノ三昧とのこと。

09:00〜 空港ピアノ「マルタ島」45分
10:00〜 BS1スペシャル「ショパン・時の詩人たち 第一回国際ピリオド楽器コンクール」110分
00:00〜 BS1スペシャル「もうひとつのショパンコンクール〜ピアノ調律師たちの戦い〜」110分
14:00〜 駅ピアノ「チェコ・プラハ 特別編」45分
15:00〜 BS1スペシャル「瓦礫(がれき)のピアニスト」50分
16:00〜 駅ピアノ「多民俗都市 アムステルダム」15分
16:15〜 空港ピアノ「音楽とともに シチリア島」15分

という具合に、途中ニュースなどを挟みながら、番組のみで計370分、実に6時間10分にわたって、ピアノ関連の番組が放送されたことになります。BSだからこそできることだとしても、なんたる気前の良さ。

マロニエ君は個人的には、駅/空港ピアノのたぐいはあまり興味が無く、無造作に置かれた一台のピアノを通じてさまざまな人間模様に触れる趣向だろうと思いますが、延々同じことの繰り返しで、テレビで素人の演奏を聴いてまで楽しむ趣味はないので、これはいつも見ません。
続く「ショパン・時の詩人たち 第一回国際ピリオド楽器コンクール」「もうひとつのショパンコンクール〜ピアノ調律師たちの戦い〜」「瓦礫(がれき)のピアニスト」はいずれもすでに見ていたので、残念ながら個人的に新鮮なものはひとつとしてありませんでした。

とはいえ、せっかく放送されるのだから、なんだかもったいないような気がして、いちおう録画してしまいました。
それにしても、これだけの長時間、NHKがピアノの番組を集めて半日がかりで放送したというのは、ただただ驚くばかり。

娯楽も趣味も多様に広がる時代だからこそ、BSチャンネルでコアなファンのための番組を制作することもできるようになったのでしょうし、昔と違って、ピアノが大人の楽しみとして注目されて、そこそこ人気があるという小さな社会現象ということなのか。

あるいは世の中のほとんどがハイテク浸けになった今日、ローテクの塊で裏ワザや早道のない、地道な練習を積み上げていくしかないピアノが、これまでとは違った方位から注目されているのか、そのあたりのことはよくわかりません。
ただ、マンガにも「ピアノの森」や「ピアノのムシ」、小説にも「羊と鋼の森」や「蜂蜜と遠雷」などピアノを取り扱ったものが続々と登場して映画にまでなるあたり、いったいピアノはどういう捉え方をされているのか、マロニエ君は正直いってさっぱりわかりません。

わからないけれど、それでも何か理由でピアノが少しでも注目されるのは嬉しいことに違いないし、そこに端を発してこのような書籍やTV番組が増えていくのは、ピアノ好きとしてはわくわくではありますね。

それとはまったく逆行しているのがCDの世界?
一時は新しく発売されるCDが多すぎて、その情報を追いかけるだけでも大変だったのが最近ではウソのように激減、ピアニストは星の数ほどいるのに大半はアーティストといえるような存在はほとんどなく、おまけに過去の音源はネットから聴きたい放題で、新譜が売れない条件が皮肉なほど揃っているのか、とにかく異様なほど少なくなりました。

もはや1枚のCDに対して2〜3000円投じて購入するという感覚がなくなったのでしょうけど、このままではプロの音楽の衰退に繋がりはしないかと思うなど、今はとかく変化が急激すぎて疲れます。

と、なんとなくここまで書いていたら、さらに翌日6日の新聞の番組表で再びびっくり!
昨日に続いて、またもBS1で
22:00〜 BS1スペシャル「私は左手のピアニスト〜希望の輝き 世界初のコンクール〜」110分
というのがあり、さっそく録画セットしました。
まだ見ていませんが、これは初めてで楽しみ。

この道の日本を代表する技巧派の智内威雄氏も出演とあり、いやが上にも興味は高まります。
これを加えると2日間で480分、すなわち8時間にも及ぶピアノ番組というわけで、これは大変なお年玉となりました。


これで終わりかと思ったら、さらに7日の23:55から今度はNHK総合で「ピアノの森」がアンコールとして5話連続で放送されるようで、どうなってんの?って感じです。

2019/01/08 Tue. 02:34 | trackback: 0 | comment: -- | edit